事例1「生きる気力がない」(1か月コースの事例)
何をやってもうまくいかない自分
Hさんは、40代の男性でした。初めに、短期解決を求めて、90分カウンセリングを申し込まれました。
主訴
不運が続いて何をやっても楽しくない。
今後がとても不安でこのまま死ねたらいいのにとさえ考えてしまう。
彼は、カウンセリングを以前に受けられた経験があり、現在の状況を順を追って、丁寧に話し始めました。現在一人暮らしであるが、離婚を2度経験されていること。
2度目の離婚では、奥様から一方的に別れを告げられ、納得がいくものではなかったこと。そして、そのことで家族からも、結婚するよりも一人でいる方が幸せではないかと言われていること。・・・・などを、とつとつと話されました。
声に張りがなく、絶望感に打ちひしがれていることが伝わってきました。
この90分カウンセリングでは、お話の中からご自身の感情にはほとんど触れることがなく、本当の心が閉ざされていると直感的に見取りました。
そこで、現在の心をまずは感じることを目標にしてセッションを進めました。
しばらくして、父親については怒りしか感じていないとぽつりとつぶやきました。
初めて、感情を含む言葉を口にしたのです。
ここが、本当の心への切り込み口になりました。
Hさんは、父親の期待に応えるために自分自身の心を感じることなく生きてきたこと、支配的な父親への反発心を潜在的に持っていたことを告白されました。
結婚でさえも、親の期待に応えるためにしたことであることにも気づかれました。
アフターケアメールで感情を肯定
セッションの数日後にアフターケアメールを差し上げました。以下、一部を紹介します。
先日は、90分カウンセリングをお受けいただきましてありがとうございました。
お話をお伺いするにつれ、一つ一つの出来事により、あなたの心の中の希望という鏡が曇っていることを感じ取りました。
さて、カウンセリングを通していくつもの気づきがありました。
あなたの結婚観、生活感、女性観など、・・・・
結婚生活を継続したかったが、そうならなかった。
そこには、間違いなく自分らしさの喪失があります。
人は自分らしさを喪失すると、感情が出なくなります。自らを抑圧している状態ですね
「何かあったら言ってね。」
あなたは、優しく振舞いました。
でも、残念ながら奥様はあなたに心を開けなかった。
そこには本当の奥様の感情が、あったことでしょう。
悲しみ、不安、怒り・・・・・奥様はもやもやとしたものを持ち続けていたことが想像できます。
自分は浮気も無駄遣いもしていないし、何も悪いことはないと思うかもしれません。
でも奥様の心が離れた理由は、全く別のところにあったということです
私は、セッション中、ひょっとしたら、反対にあなたご自身にそういう背景があるのではと思い、ご家族との関係についてお尋ねしました。
そしたら、やはり、ありました。
お父様に向けられた怒り
あなたは、親の言うとおりにするいい子になるように努めてきました。
真面目に勉強し、仕事をし、周りの期待に応えてこられたはずです。
立派なご宿業につかれ、社会的な責任を果たしてこられたのでしょう。
でも、きっとご自分らしさを十分感じてこられなかったのではありませんか。
我慢することを学習してきたあなたは、自身の感情をも表出しないことを覚えたはずです。
感情を抑圧すると、心に忠実でなくなります。
自分の本当の心で周りと関わることが希薄になります。
ただ、このことは、あなたが悪いのでもありません。
ですから、自分を責める必要は全くありません。
ご両親も純粋な子供の成長を願っていて、あなたへの愛情には疑いの余地はありません。
現在に至る背景があったということです。まずはこの点を正しく理解することが大切です。
では、今、どうするべきなのか。
あなたはあなたご自身の本当の心を見つけて、そこから自分らしく生きる道を選択することです。
もう、親の支配下にありませんし、どう生きるかも自分の意志で選択できます。
親とのかかわりやインナーチャイルドについては、具体的に当ホームページの心理学のとびらに書いてありますので、お読みください。
心についての理解が深まります。
ご自身が、自分らしさを感じ、喜び・悲しみ・不安・怒りの感情を常に感じていけば、あなたの周りにいる人も自分らしく振舞います。
本当の心同士で触れ合っていれば、絆が生まれます。
そうなったとき、3度目は、ご自身の輝きで幸せな結婚生活を作り出していくはずです。
私は、そう信じます。
キーポイントは、感情をたっぷりと感じ、意識していくことです。
そして、日常的に感謝と思いやりを与え続けてください。
女性はいつでも自分にかまってほしいのです。
そうして、自分の存在感を確かなものにしていきます。
もし、そうであれば奥様は決して家を出ていくことはありません。
これも、心に刻んでおいてください。
失敗も成功も自分の心が評価しているだけのことで、出来事はすべて経験になります。新しい意識でスタートをしていきましょう。
今回の90分がお役に立てましたら、幸いです。あなたの幸せな人生を心から願っております。
Hさんは、メールの送信後、しばらくして1か月コースをお申し込みになられました。
人生を変えたい思いで申し込まれた1か月コース
「人生を変えたいという本心の切実なる思い。」
この心が、主体的にカウンセリングを受ける動機になりました。
これまで、誰にも温かい言葉をかけてもらったことがなかったHさん。
人生のチェンジのきっかけを求め続けていたHさんは、前回の90分では語り切れなかった細かな点についても話し始めました。
カウンセラーとクライエントが共感的な空間を感じながら、次第にご自身の過去の感情についても感じ始めたのです。
そして、自分自身の心を受容していかれました。
不安障害があり、20代前半から5年間ほど薬を飲み続けていたこと。
転職を繰り返していたこと。
弟が非行に走った時期があり、長男としてしっかりしないとというプレッシャーをずっと感じていたこと。
そんな弟が、現在家を離れて、幸せな家庭を持っていること。
家の期待に応えてきたはずの自分が、2度も離婚を繰り返していること。
すべてが、自己否定につながっていました。
これまでは、周りへの気遣いから自らを押し殺してきました。
そして、自分の中に見えないストレスをため込まれていたのでしょう。
時に、それが感情を一気に吐き出すこと、必要以上の買い物に走ること等、いろいろな形で噴出するというサイクルを繰り返してきました。
心のどこかで、そのようなご自分を責めていました。
もちろん、そんな自分を好きになることもできませんでした。
そして、Hさんはとうとう本当の願いに到達されました。
今本当にやりたいことをやって、人生を楽しみながら生きていきたい。そのために、一緒に歩む伴侶は欲しい。
結婚についても親の期待ではなく、初めて自分の願いとして実現したいと思ったのです。
そこで、願いを明確にするために、「瞑想セラピー」を行いました。
瞑想セラピーは、心をリラックスさせて、自身の無意識にある心の在りどころにアプローチする作業です。
事前に条件を確認しました。
①クライエントはカウンセラーの質問に端的に答えること。
②クライエントは逆質問をしないこと。
③鼻の頭、胸の間、下腹部の中心を結んだ線をイメージしていること。
カウンセラーは、「あなたがあと1週間のと命だとしたら、何をしますか。」と問いかけました。
Hさんは、しばらく考えた後、ぱっと思い浮かんだイメージを言葉にしました。
「今、ニューヨークのマンハッタンの風景が思い浮かびました。」
「次に、高価な酒のボトルが出てきました。」
思考は、その原体験がいくつもの実体験を通して作り上げられていきます。
ニューヨークについて、少しお話を深めてお聞きしました。
中学の時に地理の資料集で見た写真のイメージであること。
世界を動かす中心であること。
そこに行くことで何か自分に大きな力が湧いてくるのではないか。
無意識に確実にアプローチしています。
そこで、その思いを確かなものにしながら、行動に移すことを提案しました。
一緒に考えた行動は、
「まず書店に行って、ニューヨークに関する本を読んでみること。」
「WEBページで、ニューヨークの最も気に入った写真を印刷して、部屋の最も気に入る場所に貼ること。」
行動が思いを実現させていきます。
今この瞬間に喜びを感じること
セッションを進めの中で、Hさんは周りの評価が気になるご自身も感じていきました。
確かに自分には「~すべきだ。」「~こうあるべきだ。」という思いが強く、周りもそのように見ていることがあると気が付いていかれました。
周りへの評価は、自分が周りを評価していることと同じである。
カウンセラーの言葉に、なるほどと納得されました。
自分の本当の想いの実現にフォーカスし、喜びを感じて生き始めたとき、そこに過去のトラウマ、未来への不安、周りの評価や存在は一切介入する余地はありません。
そのとき、あなたは無敵になるのです。
自分の本当の想いに気づき、行動を起こしたHさんは、夢を共有するパートナーと出会い、それを実現することと信じています。
カウンセラーの感想
今回、90分カウンセリングに引き続いて、1か月コースをお取りいただきました。
セッションを重ねるたびに、お辛い心の内が時には私の心に転移しつつ、次第にHさんの心が開かれていくのを感じていきました。
カウンセリングは、心の無意識にアプローチする作業です。
1か月間、共に心を共有させていただきながら、あなたは自分の心の仕組みやはたらきを十分に理解されました。
今後、感情が沸き上がってきたときには、自分と対話をしていきましょう。
対象は周りではなく、あくまで自分の内にあります。
毎回、カウンセリングを通して、カウンセラーも共に成長させていただいていることに心から感謝申し上げます。
この世で唯一のご自身をたっぷり感じて、行動につなげていってください。
そこから、あなたの世界は無限に広がっていきます。
事例2「過去への罪悪感」(2か月コース)
始まりは一通のメールから
Aさんは、30代の女性の方でした。初めに、30分のスカイプカウンセリングを申し込まれました。(クライエント)Aさん 30代 女性(担当)江田カウンセラー
10代の頃に友人を事故で亡くなしたことについて、ずっとご自身を責め続けてこられていました。
ちょうど、その命日が近づいていて、心の中に辛い当時の出来事がフィードバックしたのです。
この時には、悲しみのありったけをお話しくださいました。
しばらくして、カウンセリングを本格的に受けてみたいと、Aさんから人生の足跡を綴った一通の長文メールをいただきました。
もし、こんな自分が変われるのならという条件で、60分のセッションを8回行う2か月のスカイプカウンセリングコースを申し込まれました。
もちろん、変わるのはご本人なので、「あなたがそう望まれるのなら、きっとそうなっていきます。」とお答えして、ロングコースのカウンセリングが始まったのです。
今回は、ご本人のご了解をいただいた上で、その流れをご紹介いたします。
主訴
過去のトラウマからを断ち切りたい。
ギャンブル依存、買い物依存から抜け出したい。
現状
周りの言動に左右される。
良い人間でいようとしている。
本来の自分をうまく出せない。
集中力が途切れて、やるべきことを投げ出してしまうことがある。
子供に感情的になってしまう。
涙を流しながら、感情をリセット
Aさんは、ご自身の壮絶な過去をお話しくださいました。
・もし言葉をかけていたら友人を失わずに済んだのではないかと20年以上もご自身を責め続けてきたこと。
・「おまえが産まれなければ母親は助かったのに」と父親に言われた心ない言葉をずっと持ち続けてきたこと。
・そのことで幼少期に、父親殺しと言われたこと。
・仕事仲間の納得のいかない言動に対して攻め続けるご自分のこと。
時間をかけて、心の中を整理するように、時に涙を流しながら、お気持ちを掃き出していきました。
変わっていくご自身を感じながらのセッション
精神科に10年以上も通い続け、チェンジのきっかけを求め続けていたAさん。
受容的なカウンセリングの中で、ご自身の本当の心に気づいていきました。
これまでは、周りへの気遣いから自らを押し殺してきました。
そして、自分の中に見えないストレスをため込まれていたのでしょう。
時に、それが感情を一気に吐き出すこと、必要以上の買い物に走ること等、いろいろな形で噴出するというサイクルを繰り返してきました。
心のどこかで、そのようなご自分を責めていました。
もちろん、そんな自分を好きになることもできませんでした。
カウンセラーは、「行動には、必ずその背景があります。それをわかることが大切です。」と説明しました。
Aさんは、理解力の高い方でした。
行動と心の在り方がつながっていることをセッションを通して、しだいに理解していきました。
それでは自分らしくあるためには、どうしたらよいか。
私たちは、こんな、やり取りを繰り返しました。
・あなたの感情には、理由があります。それは、あなたそのものであり、一緒に受け止めていきましょう。
・怒ることも自然な感情です。それを否定する必要はありません。
・感情を持つことは、決して悪いことではありません。それをどう受け止めるかが大切なのです。
・そして、相手とのコミュニケーションにおいては、自分のパーソナルスペースをまず意識して、守っていきましょう。それによって、相手のパーソナルスペースも守ってあげることができます。
・人を変えようとしないことです。反対に言えばあなたも周りの人に左右される必要はないのです。当然、周りの人の評価を気にする必要もありません。あなたは本来の自分を取り戻して、自分の振動を高めましょう。
Aさんは、元々、元気なころの自分を感じていました。
そのため、私が方向付けをしただけで、自分らしさを自らの内から引き出し、取り戻していきました。
セッションも気持ちが乗ったときに連絡を取り合いながら行い、お時間も60分にしばられることなく、気が乗らないときには30分にしてみたりして、状況に合わせて行いました。
ある日のスカイプでのやり取り

カウンセリングの副作用
とは言っても、新しいアクションを起こすことは、これまでとは違った結果が起こりうるため、それを受け止めきれないことがあります。
これは、カウンセリングの副作用と言われています。
だからこそ、新たなアクションを見守り、支え続ける役目もカウンセラーにはあるのです。
これまで我慢してきた自分から、我慢しない自分へのチャレンジは始まったばかりです。
心が解放されたご自分を感じつつも、そのさじ加減がつかみきれないAさんの戸惑いもありました。
言い過ぎて、今度は相手にストレスを与えていることにも気づいたのですね。
人との距離感のことも、セッションで随分とやり取りをしてきました。
自分が自分らしくあることは、相手をも相手らしく尊重できることでもあります。
変な気遣いをすることなく、自然体で人との良好な人間関係を築いていける手ごたえを十分感じられます。
どんなときにも寄り添うことが大きな力に
実は、セッションの度に、様々な困難がありました。
些細なことからお父さんとの大喧嘩が起きたり、家族のように大事にしていたペットがなくなったりして、気持ちが弱まりかけたこともありました。
それでも本来の私を取り戻すんだという強い信念がAさんにはありました。
時間軸も人生のベクトルも、常に未来に向かっています。
これまでたくさん過去を気にしてきた分、未来に目を向けたら、あなたの人生からは豊かな恵みが泉のようにわいてきます。
自分の軸をもち、振動を強めたAさんは、人の評価に動かされないご自分に愛着を感じ、きっとそれを大切にして生きていかれることでしょう。
カウンセラーの感想
カウンセリングというものは、クライエント様の心の叫びをただただ受け止め、鏡のように映し出す作業と思っています。
私が傾聴し、受容していると、あなたはどんどんご自分の本当の心の在りどころに気づいていかれました。
そして、ご自分の決定で新しいアクションを起こすまでに至りました。
認知行動療法によって、人との関係において新しい捉え方ができるようにもなりました。
私はあなたにとって本来の姿を導き出す媒体でしかありません。
あなたは、ご自身のお力で立ち上がり、振動を強めていきました。
そのことが何にもまして貴重なことでした。
今回の8回のセッションは、私のこれまでの臨床経験の中でも、カウンセリングの真髄に迫ることができた事例として挙げられるケースです。
このような経験をさせていただいたことにカウンセラー側からも改めて感謝申し上げます。
また、ご自身の振動が弱まりかけたら、ぜひお声がけください。
いつでも、お待ちしております。